例題12: フィルタを通る流れの圧力損失(多孔質 Darcy-Forchheimer)
エアフィルタ・触媒担体・ハニカム整流体など「中身を解像せずに抵抗として扱う」 多孔質モデルの使い方を、理論式と 2% 未満で一致する検証つきで学びます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解析タイプ | 単相流(非圧縮)・Internal(内部流れ)+多孔質ゾーン |
| ソルバ | simpleFoam(定常・全域層流) |
| ジオメトリ | 直管 D = 50 mm・L = 1000 mm の中央に多孔質円盤(D = 55 mm × 厚さ 40 mm) |
| 多孔質係数 | Darcy d = 5×10⁷ 1/m²・Forchheimer f = 200 1/m(等方) |
| 流体 | 空気(ρ = 1.225 kg/m³, μ = 1.78×10⁻⁵ Pa·s) |
| 流入条件 | 入口面法線方向に 2 m/s |
| メッシュ | snappyHexMesh・約 81,000 セル(ベース 10 mm 立方) |
| 実行規模(目安) | 1 コア・約 1 分・1 クレジット |
所要時間は目安です。実行環境・メッシュ規模・混雑状況により変動します。
この例題で学べること
- 多孔質ゾーンの設定 — 🎯 解析タイプで「🌐 多孔質ゾーン」を有効化し、 ゾーン形状(STL/STEP)と Darcy-Forchheimer 係数 d・f を与える
- 層流強制モードの意味と適用範囲 — 多孔質内の乱れは解像できないため、 乱流モデルを切って Forchheimer 項に慣性損失を代表させる。本例題は理論式との 直接比較が目的なので全域層流にしているが、これは実機解析への一般的な推奨では ない(下記「自分の問題に応用するには」を参照)
- 理論式での検算 — Δp = (μ·d·U + ½ρ·f·U²)·L を手計算して CFD と比較する
- メッシュとゾーン境界の関係 — ゾーンはセル単位で切られるため、境界が セル面に揃う分割だと理論との比較が最もクリーンになる
実行手順
- ex12_porous_filter_dp.ofb.zip をダウンロードする
- StreamWright サイドバーの 📂 Load Project (.ofb.zip) にドラッグ&ドロップする

- 各タブで設定を眺める(変更は不要です)
- 🎯 解析タイプ: 追加機能「🌐 多孔質ゾーン」が ON
- 4️⃣ Physics: 多孔質ゾーン
filter(POROUS.step 由来)に d = 5×10⁷ 1/m²・f = 200 1/m、「層流として扱う(推奨)」が ON - 1️⃣ Patch Setup:
inletが面法線方向 2 m/s、outletが圧力 0 Pa - 6️⃣ Run タブ → ケースサマリを確認 → 🚀 Generate & Run

- 1 コアで約 1 分で完了します(約 230 反復で収束判定)
期待される結果
実行が正常に終われば、以下とほぼ同じ数値になります(見本: sample_report.html)。
| 量 | 値 | 確認場所 |
|---|---|---|
| 収束反復数 | 約 230 回 | Run タブ・solver.log |
| 入口平均圧力 p/ρ | 72.97 m²/s² | swConv_p_inlet モニタ |
| 圧力損失 Δp | 89.4 Pa(= 72.97 × ρ 1.225) | レポート・モニタ |
| 流量(入口=出口) | 3.856×10⁻³ m³/s | swConv_mdot モニタ(質量保存) |
| 品質チェック | 合格(PASSED・警告なし) | 3 段階総合判定 |

結果の可視化例(Post Processor タブ):


理論値との照合(この解析は正しいか?)
OpenFOAM の多孔質モデル(explicitPorositySource / DarcyForchheimer)は 単位長さあたり次の圧力勾配を課します:
∇p = −(μ·d·U + ½·ρ·f·|U|·U)
厚さ L = 40 mm・U = 2 m/s(断面が管と同じなので見かけ流速も 2 m/s)を代入すると:
- Darcy 項(粘性): μ·d·U·L = 1.78×10⁻⁵ × 5×10⁷ × 2 × 0.04 = 71.2 Pa
- Forchheimer 項(慣性): ½·ρ·f·U²·L = 0.5 × 1.225 × 200 × 4 × 0.04 = 19.6 Pa
- 開管部の層流摩擦: < 1 Pa(無視できる)
- 理論値: Δp ≈ 90.8 Pa
解析結果 89.4 Pa は理論値の −1.6% で一致します。多孔質モデルは 「与えた式をそのまま解く」ため、係数が正しければ CFD と手計算はここまで 一致します——実務ではむしろ d・f をどう決めるか(フィルタの実測 ΔP-Q カーブからのフィッティング)が本題で、StreamWright の Physics タブには 実測値から係数を逆算する「ΔP 入力」モードも用意しています。
📐 メッシュの豆知識: 多孔質ゾーンはセル単位で割り当てられるため、ゾーン 境界がセル面に揃わないと実効厚さが ±セル半分だけずれます。本例題は ベース 10 mm がゾーン境界(±20 mm)を割り切る分割にしてあり、粗いセルの 検証(16.9 mm ベース)では同じ設定でも Δp が −8% ずれました。理論照合を するときはゾーン寸法とセルサイズの関係に注意してください。
自分の問題に応用するには
- 実物フィルタの係数化: メーカーの ΔP-Q カーブ 2 点以上から Physics タブの 「📊 圧力損失データから計算」で d・f を自動算出できます
- 異方性抵抗: ハニカムのように方向で抵抗が違う場合は d・f を成分ごとに 設定します(流路方向だけ小さく)
- 乱流と併用したい場合: 本例題が全域層流なのは、Darcy-Forchheimer ソース項 による圧力損失を理論式と直接比較するためにあえてそう設定しているからです。 Darcy-Forchheimer 項は多孔質体による平均流の損失を表すもので、自由流領域の 乱流を置き換えるものではありません。実機解析では、自由流領域の Reynolds 数が 高ければ乱流モデルを使い(「層流として扱う」を OFF)、多孔質領域内の乱流量の 扱い(生成項の抑制など)は個別に検討してください
- 自分のジオメトリで解くには: 流体領域とゾーン閉曲面の2ファイル構成は ジオメトリ準備ガイド 第5章(多孔質ゾーン) にまとめています。CAD ソフト別の操作は 第7章 を参照してください
ジオメトリ: fixtures/porous/porous(例題化時に新規検証: 2026-07-18・ Δp = 89.4 Pa が Darcy-Forchheimer 理論 90.8 Pa の −1.6% で一致)