例題7: ラバルノズル内の圧縮性流れ(亜音速・等エントロピー照合)
収束-発散ノズル(ラバルノズル)内の圧縮性流れを全圧・全温の流入条件で解き、 スロートの状態量を等エントロピー理論と定量照合します。圧縮性解析の 基本ワークフローと、probe(点モニタ)の使い方を学びます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解析タイプ | 圧縮性流れ(rhoSimpleFoam・定常) |
| ジオメトリ | ラバルノズル(入口 R50 → スロート R20 → 出口 R40 mm・全長 300 mm) |
| 流入条件 | 全圧 p₀ = 101,325 Pa・全温 T₀ = 300 K(よどみ状態を指定) |
| 流出条件 | 静圧 100,500 Pa |
| 乱流モデル | k-ε |
| メッシュ | snappyHexMesh・ベース 4 mm・約 64,000 セル |
| モニタ | probe 2 点(スロート z=150 mm・出口近傍 z=290 mm)で p/U/T を記録 |
| 実行規模(目安) | 1 コア・約 6 分・1 クレジット |
所要時間は目安です。実行環境・メッシュ規模・混雑状況により変動します。
この例題で学べること
- 圧縮性解析の流入条件 — 速度ではなく「全圧+全温」で与える意味 (よどみ状態から流れが加速する)
- STEP 1 ファイルからの内部流れ設定 — アップロード時の面分割 (Face_1/2/3)に入口・壁・出口を割り当てる
- probe(点モニタ) — 知りたい場所の物理量を反復ごとに記録する
- 等エントロピー理論との照合 — 圧縮性 CFD の妥当性確認の定石
実行手順
- ex07_nozzle_compressible.ofb.zip をダウンロード
- StreamWright サイドバーの 📂 Load Project (.ofb.zip) に投入

- 設定の見どころ
- 🎯 解析タイプ: 圧縮性流れ
- 4️⃣ Physics: 流入モード「全圧・全温」(p₀ = 101,325 Pa / T₀ = 300 K)、 出口静圧 100,500 Pa、空気(Sutherland 粘性)
- 1️⃣ Patch Setup: Face_1(z=0 の円板)= inlet、Face_2(側壁)= wall、 Face_3(z=300 mm の円板)= outlet
- 7️⃣ Post Processor / probes: スロート (0, 0, 0.150) と出口近傍 (0, 0, 0.290)
- 6️⃣ Run タブ → ケースサマリを確認して 🚀 Generate & Run

期待される結果(probe 実測値)
| 量 | スロート (z=150 mm) | 出口近傍 (z=290 mm) |
|---|---|---|
| 静圧 p | 約 96,470 Pa | 約 100,480 Pa |
| 静温 T | 約 295.9 K | 約 299.7 K |
| 軸方向速度 Uz | 約 91 m/s | 約 36 m/s |
| 質量流量 | 0.129 kg/s(入口 = 出口・質量保存) |

結果の可視化例(Post Processor タブ):


等エントロピー理論との照合(この解析は正しいか?)
照合のしかたに注意点があります。 出口静圧だけから理想(等エントロピー)流量を 予測すると 0.22 kg/s ですが、実流れの流量は 0.129 kg/s です。これは誤差ではなく 物理です: 拡大部(ディフューザ)では境界層と圧力回復損失が生じ、わずか 825 Pa の 駆動圧力差に対して損失が支配的になるため、系全体の流量は理想値より小さく なります(実機のベンチュリでも同じ)。
一方、収縮部(入口→スロート)は境界層が薄く加速流のためほぼ等エントロピーです。 そこで「実測の質量流量」を基準に等エントロピー関係式でスロート状態を予測すると:
| 量 | 等エントロピー理論(ṁ = 0.129 kg/s 基準・M ≈ 0.26) | CFD (probe) | 差 |
|---|---|---|---|
| スロート静圧 | 96,500 Pa | 96,472 Pa | 0.03% |
| スロート静温 | 296.0 K | 295.9 K | 0.03% |
| スロート速度 | 90 m/s | 91.2 m/s | 1.3% |
さらに、スロートでの全圧(p·(1+0.2M²)^3.5 ≈ 101,180 Pa)は入口全圧 101,325 Pa に対して損失わずか 0.15% — 収縮部の等エントロピー性が数値的にも確認できます。
💡 教訓: 圧縮性ノズルの検証では「どこが等エントロピーで、どこが損失支配か」を 分けて考えます。全体流量は拡大部の損失(実在効果)で決まります。
⚠️ この照合の位置付け: 上表は CFD が出した質量流量を理論式の入力に 使っているため、系全体の流量予測を独立に検証したものではありません。 確認できているのは「与えた流量に対し、スロート近傍の局所状態量が 一次元等エントロピー関係と整合している」ことで、いわばサニティチェックです。 独立検証にしたい場合は、チョーク条件(スロート M = 1)まで圧力比を下げ、 全圧・全温・スロート面積・比熱比・気体定数という既知条件だけから 臨界質量流量を計算し、CFD の流量と比べてください。
自分の問題に応用するには
- 圧力比を変える: 出口静圧を下げると流量・スロート Mach が上がります。 スロートが M=1 に達する(チョーク)と流量は頭打ちになります。 ※ チョーク後の超音速拡大や衝撃波を含む問題は別例題(翼まわり超音速)で扱います
- ガス種を変える: Physics タブで分子量・Cp・粘性(Sutherland)を変更できます
- probe の追加: 知りたい位置の座標を Post Processor タブで追加するだけです
- 自分のジオメトリで解くには: 流路を流体ボリューム化する手順(圧縮性でも同じです)は ジオメトリ準備ガイド 第1章(内部流れ) にまとめています。CAD ソフト別の操作は 第7章 を参照してください
ジオメトリ: fixtures/compressible/nozzle_simple(検証: 2026-07-16 例題化時に 実機 E2E・probe と等エントロピー理論の照合で新規確立)