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例題3: 90°分岐管の流量配分(乱流内部流れ・並列管路)

1 本の管が 2 本に分かれるとき、流量はどう配分されるか——ポンプ・空調・冷却配管の 設計で最も基本的な問いを、並列管路の抵抗理論と照合しながら解きます。

項目 内容
解析タイプ 単相流(非圧縮)・Internal(内部流れ)
ソルバ simpleFoam(定常)
乱流モデル k-ε
ジオメトリ 90°分岐管(助走管 D = 5 mm・L = 300 mm が ±45°・計 90° の 2 枝に分岐)
枝の構成 太枝 D = 5.0 mm/細枝 D = 2.8 mm(軸長はともに 300 mm)
流体 空気(ρ = 1.225 kg/m³, μ = 1.78×10⁻⁵ Pa·s)
流入条件 入口面法線方向に 30 m/s(Re ≈ 10,000・乱流)
メッシュ snappyHexMesh・約 149,000 セル(表面 level 3・細枝断面に約 6 セル)
実行規模(目安) 4 コア・約 2.5 分・1 クレジット

所要時間は目安です。実行環境・メッシュ規模・混雑状況により変動します。

この例題で学べること

  1. 複数出口の流量モニタ — Runtime Monitors の Surface Integrals で パッチごとの体積流量(phi)を反復ごとに記録する
  2. 質量保存による検算 — 入口流量と出口流量の合計が一致することを確認する (本例題では誤差 0.001% 未満)
  3. 並列管路理論との照合 — 「両枝の圧力降下が等しい」条件から配分比を予測し、 CFD の結果と突き合わせる
  4. 細い流路のメッシュ解像 — パッチ個別 Refinement Level の使いどころ (細枝の解像と、微小な CAD 残骸の遮断)

実行手順

  1. ex03_branch90_split.ofb.zip をダウンロードする
  2. StreamWright サイドバーの 📂 Load Project (.ofb.zip) にドラッグ&ドロップする

プロジェクトをロードした直後の画面

  1. 各タブで設定を眺める(変更は不要です)
  2. 1️⃣ Patch Setup: inlet が面法線方向 30 m/s、outlet_large(太枝)と outlet_small(細枝)が圧力 0 Pa(ゲージ)の出口
  3. 4️⃣ Physics: 乱流初期値 k = 3.375, ε = 2.91×10³(U = 30 m/s・D = 5 mm の スケールに合わせた値。「🔄 自動計算」ボタンと同じ式です)
  4. 8️⃣ Runtime Monitors: Surface Integrals に入口・両出口の流量モニタが 設定済み
  5. 6️⃣ Run タブ → ケースサマリを確認 → 🚀 Generate & Run

Run タブのケースサマリ(実行前レビュー)

  1. 4 コアで約 2.5 分で完了します(約 540 反復で収束判定)

期待される結果

実行が正常に終われば、以下とほぼ同じ数値になります(見本: sample_report.html)。

量 値 確認場所
収束反復数 約 540 回 Run タブ・solver.log
入口流量 5.61×10⁻⁴ m³/s flow_inlet モニタ
太枝の流量比 80.9%(4.54×10⁻⁴ m³/s) flow_outlet_large モニタ
細枝の流量比 19.1%(1.07×10⁻⁴ m³/s) flow_outlet_small モニタ
質量保存誤差 < 0.001% 入口と出口合計の差
入口圧力(参考) p/ρ ≈ 1,647 m²/s²(Δp ≈ 2.0 kPa) swConv_p_inlet モニタ
品質チェック 合格(PASSED) 3 段階総合判定

実行結果: 総合判定と結果サマリー

💡 総合判定に「細枝の流量が ±1.3% で微振動」という注意が出ることがあります。 配分比の帯域判定(±数%)には影響しません。反復回数(End Time)を増やすと さらに落ち着きます。

結果の可視化例(Post Processor タブ):

統合 3D ビュー: 分岐部を流れる流線(|U| で色付け・細枝側の増速が見える)

2D 断面スライス: 速度・圧力コンター

理論値との照合(この解析は正しいか?)

両枝は出口圧力が同じ(大気開放)なので、分岐点から出口までの圧力降下が等しく なるように流量が配分されます。曲がり角度が両枝とも 45° で同じため、配分は ほぼ管路抵抗(直径差)だけで決まります。

Blasius 摩擦則 f = 0.316·Re^(-1/4) を使い、Δp₁ = Δp₂ を満たす配分を解くと:

⚠️ 細枝の Re ≈ 3,300 は、滑らかな直管の完全発達乱流として一意に扱える 領域ではありません。分岐部の擾乱・入口乱れ・助走距離・管内面粗さによって 乱流化する可能性は高いものの、Blasius 式を無条件に当てはめられる条件では ないため、細枝の流量配分は遷移状態や乱流モデルの影響を受け得ます。 下の理論帯域を広めに取っているのはこの不確かさを織り込んだためです。

理論帯域: 太枝 78〜88%(Blasius±接合部損失±細枝の遷移域不確かさを含む)

解析結果 80.9% はこの帯域のほぼ中央です。特に接合部損失を K ≈ 1 と した予測(81.1%)と 0.2 ポイントの差で一致しており、45° 曲がり+断面変化の 実損失を CFD が妥当に捉えていることが分かります。

📐 なぜ細枝にも 19% 流れるのか: 断面積は太枝の 31% しかありませんが、 乱流の圧損は Δp ∝ Q^1.75/D^4.75 なので、細いほど「単位流量あたりの抵抗」が 急増し、流量が抵抗の均衡点まで絞られます。層流(Δp ∝ Q/D⁴)なら配分は さらに偏り、太枝 91% になります——Re によって配分が変わるのが管網設計の 面白いところです。

自分の問題に応用するには


ジオメトリ: fixtures/internal_flow/pipe_y_90(例題化時に新規検証: 2026-07-18・ 質量保存 <0.001%・配分 80.9% が Blasius 並列管路理論の帯域内であることを確認)

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